自律神経が乱れるとどんな症状が出る?29年の臨床から考える

自律神経のバランスと体全体のつながりをイメージした女性

「自律神経が乱れると、どんな症状が出るんですか?」

これは、当院でもよく聞かれる質問です。

頭痛、めまい、動悸、不眠、胃腸の不調、疲れやすさ……。

自律神経について調べてみると、本当にさまざまな症状が出てきます。

あまりにも多いので、

「これも自律神経なの?」

と思われる方もいるでしょう。

実は私自身、約20年前に自律神経について本格的に学び始めた頃、同じようなことを感じました。

というより、少し違います。

当時の私が思ったのは、

「これだけ体のいろいろな働きに関係しているのなら、結局、すべての症状に何らかの形で自律神経が関係しているのではないか?」

ということでした。

もちろん、これは「すべての病気や症状の原因が自律神経にある」という意味ではありません。

人の身体はそんなに単純ではありません。

ただ、それから約20年間、自律神経を意識しながら多くの方の体を見てきて、今ではむしろ、

「体に起きていることを考えるとき、自律神経と完全に切り離して考えることの方が難しいのではないか」

と感じるようになっています。

院長
安井 豊

今回は、自律神経が乱れるとどのような症状が現れるのかという基本的な話から、私が長年の臨床を通して感じてきたことまで、少し掘り下げて書いてみたいと思います。

そもそも自律神経とは何をしている神経なのか

私たちは普段、心臓を動かそうと思って心臓を動かしているわけではありません。

食事をしたあとに、

「よし、これから胃を動かそう」

と考えることもありません。

寝ている間にも呼吸は続き、暑ければ汗をかき、寒ければ体は熱を逃がさないように働きます。

こうした、自分の意思とは関係なく身体の状態を調整してくれている仕組みに深く関わっているのが自律神経です。

自律神経には、大きく分けて「交感神経」「副交感神経」があります。

交感神経は活動したり緊張したりするときに働きやすく、副交感神経は休息や消化などの場面で重要な役割を果たします。

交感神経と副交感神経のバランスを表すイラスト。交感神経は仕事や運動している時、ストレスを感じている時に働き、副交感神経は休息中や食事後、リラックスしている時に働くことが説明されている。

ただし、

「交感神経=悪いもの」

「副交感神経=良いもの」

ではありません。

どちらも人間が生きていくためには欠かせないものです。

大切なのは、一方だけが強ければよいのではなく、状況に合わせて切り替わりながら働けることだと私は考えています。

自律神経が乱れると、さまざまな症状が現れる

自律神経が関係している体の働きは非常に幅広いため、そのバランスが崩れたときに現れる不調も一つではありません。

例えば、

  • 頭痛
  • めまい、ふらつき
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • 寝つきが悪い、途中で目が覚める
  • 朝起きても疲れが取れていない
  • 胃もたれ、便秘、下痢などの胃腸症状
  • 冷えやほてり
  • 汗をかきやすい
  • 倦怠感
  • なんとなく身体が重い

などがあります。

もちろん、これらの症状があるからといって、「自律神経が原因」と決めつけることはできません。

同じ症状でも、背景にはさまざまな病気や身体の問題が隠れている可能性があります。

特に、突然現れた強い症状や、いつもと明らかに違う症状、長く続いている症状がある場合には、まず医療機関で原因を確認することが大切です。

そのうえで、大きな異常が見つからないのに複数の不調が続いているとき、自律神経を含めて体全体の状態を考えてみることには意味があると思っています。

自律神経は「筋肉の状態」にも深く関わっている

ここは、私が長年の施術の中で特に注目してきたところです。

一般的に自律神経というと、

「心臓」「胃腸」「睡眠」「血圧」

などを思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、私が実際に体をみていて非常に強く感じるのが、自律神経の状態と筋肉の緊張には深い関係があるということです。

例えば、強いストレスを感じたときを想像してみてください。

肩に力が入ったり、歯を食いしばったり、呼吸が浅くなったりすることがあります。

「肩に力を入れよう」と意識しているわけではありません。

体が緊張する状況に反応して、自然に筋肉まで身構えているわけです。

臨床でも似たことをよく感じます。

体が緊張した状態からうまく抜けられなくなっている方は、肩や首、背中、腰など、さまざまな筋肉が硬くなっていることがあります。

逆に、施術によって体の緊張が抜けてくると、筋肉がふっとやわらかくなることがあります。

しかも、一生懸命もみほぐしたわけでもないのに、全身の筋肉が同時にゆるんでくることがあります。

私はこうした変化を何度も見てきました。

そのため私は、

自律神経がうまく働かず、体が緊張状態から抜けにくくなっていると、筋肉も本来のやわらかさを取り戻しにくい。

反対に、

体が適切に緊張と休息を切り替えられる状態になってくると、筋肉も余計な力を手放し、本来の状態に戻りやすくなる。

そのように捉えています。

ただし、自律神経が骨格筋を直接「硬くする」「ゆるめる」という単純な仕組みだと言いたいわけではありません。

筋肉の緊張には、姿勢や動作、疲労、痛み、精神的なストレス、神経系の働きなど、さまざまな要因が関わっています。

院長
安井 豊

だからこそ私は、「筋肉が硬いから、そこをほぐせばいい」とだけ考えないようにしています。

肩こりや腰痛も自律神経と関係する?

ここまで考えると、肩こりや腰痛の見方も少し変わってきます。

肩がこっている。だから肩をもむ。

腰が痛い。だから腰をほぐす。

もちろん、それで楽になることもあります。

ただ私は臨床の中で、それだけでは説明できないケースを数多く見てきました。

肩をほとんど触っていないのに肩の緊張が抜ける。

腰を強く押していないのに腰が軽くなる。

ある場所への刺激をきっかけに、それまで硬かった身体全体が一気にゆるむ。

こうした変化を見ていると、

「硬くなっている筋肉そのもの」だけを見ていても、体で起きていることの全体像は分からないのではないか

と思うようになりました。

肩こりだから肩。腰痛だから腰。

というように、体を部分ごとに切り分けて考えるだけでは足りないケースがあります。

体全体が緊張しやすい状態になっていて、その結果の一つとして肩こりや腰痛が現れていることもあるのではないか。

私はそのような視点でも体をみるようにしています。

20年前、「結局、全部に関係しているのでは?」と思った

自律神経について学び始めた約20年前。

心臓、血管、呼吸、胃腸、発汗、体温調節、睡眠など、身体のさまざまな働きに自律神経が関係していることを知った私は、

「こんなにいろいろなことに関わっているなら、結局すべての症状に何らかの形で関係しているのではないか?」

と思いました。

今思えば、ずいぶん大ざっぱな発想です。

でも、その疑問はずっと残りました。

そして、その後も患者さんの体を見続けてきました。

頭痛だけの人。
肩こりと不眠がある人。
腰痛と胃腸の不調がある人。
めまいと強い疲労感がある人。
いろいろな症状を同時に抱えている人。

そうした方々を見ているうちに、症状を一つずつ別々の問題として考えることに、時々違和感を覚えるようになりました。

「この肩こりと不眠は、本当に別々のものなのだろうか」

「この胃腸の不調と疲労感には、共通した背景があるのではないか」

そんなことを考えるようになったのです。

症状を一つずつ見るだけでは分からないことがあります

例えば、

肩こり。
頭痛。
眠れない。
胃腸の調子が悪い。
疲れが取れない。

こうして並べると、それぞれ別の症状です。

ところが、一人の身体の中では同時に起きていることがあります。

肩は肩。
胃は胃。
睡眠は睡眠。

と分けて考えることも必要ですが、

「この人の体全体では、今何が起きているのだろう?」

と考えてみることも大切です。

私は、その体全体を見るための重要な手がかりの一つが、自律神経だと考えています。

だからといって「何でも自律神経」ではありません

ここは、とても大切なところです。

近年、「自律神経」という言葉を耳にする機会が増えました。

その一方で、

原因の分からない不調を何でも「自律神経の乱れ」で説明してしまうことには、私は少し慎重です。

「自律神経が乱れていますね」

と言われると、なんとなく説明がついたような気になります。

でも、本当はそれだけでは何も分かっていないこともあります。

なぜ体がその状態になっているのか。

睡眠なのか。
過労なのか。
精神的な緊張なのか。
生活習慣なのか。
別の病気が隠れているのか。

いくつもの要因が重なっていることもあります。

院長
安井 豊

だから私は、

「自律神経」という便利な言葉だけで体を分かったつもりにならないこと

も大切だと思っています。

29年間、体を見てきて今思うこと

私は約20年前、

「結局、すべての症状に自律神経が関係しているのではないか?」

と思いました。

では、今もまったく同じように考えているのかというと、少し違います。

29年間、体を見てきて思うのは、

人間の体は、一つの原因ですべてを説明できるほど単純ではない

ということです。

むしろ、経験を重ねるほど分からないことも増えました。

それでも、自律神経が体全体を考えるうえで非常に重要な存在だという思いは、昔より強くなっています。

心臓。呼吸。消化。睡眠。体温。血流。そして、筋肉の緊張。

私たちが意識していないところで、体は絶えず状況に合わせて変化しています。

私は施術というものを、

体を外から無理に変えることだとは考えていません。

その人の体が、本来の状態に戻っていくのをお手伝いすること。

そのために、自律神経を含めて体全体がどのような状態になっているのかをみる。

それが、今の私の整体の基本的な考え方になっています。

まとめ|自律神経は「症状」ではなく体全体から考える

「自律神経が乱れるとどんな症状が出るの?」

その答えだけを考えれば、頭痛、めまい、不眠、動悸、胃腸の不調、疲労感など、さまざまな症状を挙げることができます。

しかし、本当に大切なのは症状の一覧を覚えることではないと思います。

自律神経は、体のごく一部分だけに関係するものではありません。

私たちが生きている間、体全体のさまざまな働きに関わり続けています。

だから、一見すると別々に見える不調も、体全体から見ると何かにつながりが見えてくることがあります。

一方で、

何でも「自律神経のせい」にしてしまうのも違います。

病気や体の異常が隠れていないかを確認することも大切です。

そのうえで、

「この症状の名前は何だろう?」

だけではなく、

「今、体全体では何が起きているのだろう?」

という視点を持ってみる。

約20年前に自律神経を学び始めてから、29年間の臨床を経た今、私はそんなふうに体をみるようになりました。

院長
安井 豊

人間の体は、本当によくできています。

そして長くみればみるほど、まだまだ分からないことばかりです。

だからこそ、面白いのかもしれません。

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